1.レスキューパラ開傘体験記(パラグライダー編)


 私は昨年、レスキューパラのお世話になってしまいました。
 これはその直後に、パラ・ハングMLにメールしたものです。


世良@リザーブ開いた!です。

6月8日(日)にレスキューパラシュート開傘しました。
日頃、仲間のパラシュートをよくリパックしていて、それを使用した人も過
去何人かいたのですが、なぜか私のいない時ばかりだったので、一度自分の
パックしたパラシュートの開傘を見てみたいと思っていたのですが、まさか
自分自身で経験するとは・・・・・。ちなみに私は年間3〜4回自分でリパ
ックしますが、使用したパラシュートは2週間前にリパックしたばかりでした。
以下その時の報告です。

(装備)

1.機体:UP ESCAPE S(ノーマル仕様:70kg〜90kg)
2.ハーネス:スカイライン・サブソニック(クロスベルトはゆるいめにセット)
3.メインパラシュート:
(1)キャノピー:フリーフライト・LARA250(ラインファースト式)に
スプリング式の誘導傘(スプリングシューター)を装着した強制開傘方式 
[OASYSではありません。念のため。]
(2)装着場所:ハーネス後ろのコンテナ
(3)開傘手順:左肩に装備したリップコードのグリップを引く。
4.サブパラシュート:
(1)キャノピー:フリーフライト16ゴア(ラインファースト式)
(2)装着場所:ハーネス右サイド
(3)開傘手順:コンテナのグリップを引く手投げ式。

#メインパラシュートは強制強制開傘方式のため、射出方向がコントロール
できず、場合によっては機体と絡んで開かない恐れもあるので、念のため小
型のサブパラシュートを着けています。(大きさから考えると骨折ぐらいの
覚悟は必要でしょうが)

5.総重量:約90kg

(状況)
場所はハチ北高原。先に飛び出した仲間が4機ほど飛んでいた。サーマルは
まだあまり出ておらず、どちらかと言うとリッジコンディションで最高で2
00mぐらいの上昇だった。
私は、やや強めの風の中テイクオフ、垂直上昇し、アクセルを踏んで前にで
た。サーマルが出始めたのか、ややボコボコした条件だが、潰れるほどでは
なかった。
そうすると、4機中の2機が翼端を折って降ろし始めた。(後で聞くとボコ
ボコしだしたので降ろしたとのこと)
私は、何で降ろすんだろうと思いつつ、サーマルをヒットし回し始めた。上
がりながら、尾根に向かって斜めに流されていくが、エスケープのスピード
ならこの程度の風なら大丈夫と思い、なおも流されながら上げ続けた。

右斜め下のテイクオフが見える位置でテイクオフより百数十メートル上昇。
テイクオフに仲間が到着して車から降りるのが見えた。同じく右斜め下に仲
間のシグマ3がいるのが見えた。上限重量で乗っているはずだが、ほとんど
ホバっていた。地面を見ると私もほとんどホバっていた。
「まずい」と思い尾根を背にしてアクセルを踏む。フルアクルにしたところ
、左翼の半分ほどが潰れた。素早くアクセルから足を外し、逆体重移動とカ
ウンターブレークで急旋回に入らないようにした。
こういう場合、旋回を止めてしまうほど、カウンターブレークを引くと、残
った翼が失速して、潰れた側と反対に旋回してより一層危険なので失速に注
意しながら弱い旋回でキープした。
ブレークコードでポンピングしても直らず、Dライザーでポンピングして
みたが、やはり直らなかった。よく見ると、翼端が横から真ん中に向かって
潰れるような潰れ方で、ラインが絡まっているようだった。
こういう場合は、Aライザーを引いて、大きく潰し直すと直るのだが、低高度
なのでやる気がしなかった。

「さてどうしたものか」と思っていると、ゆっくりした旋回が、尾根に向か
って追い風方向になった。と思いきや、旋回速度が早まりだした。逆体重移
動とカウンターブレークを増やすが、旋回速度が早まるばかりだった。振り
回されているうちに、翼端が戻ったが、さらに激しく振り回され出した。
まるでコントロールがきかない。とても回復しそうな兆しがない。機体も心
なしか振り回されながら徐々に角度が前にきたような気がした。
「このままではバーチカルスピンにはいるのでは!?」と恐怖した。高度も低い。

レスキューパラシュートの使用を決断し、メインパラシュートを開傘すべく
左肩のリップコードのグリップを見て確認すると、両手でグリップをつかん
で引っ張った。
リップコードが抜ける。開傘を確認しようと思い、後ろを振り向こうとする
間もなく、両肩が引っ張られる感覚があり、開傘したのがわかった。

「開傘した!」と思いほっと一息する間もなく、今度は機体が暴れ出した。
機体をストールに入れて潰してしまおうと思いブレークを引くと、機体の暴
れが止まったと思いきや、機体が目線上まで前に来てしまい、下に向かって
滑空し始めた。
これは「ダウンプレーン現象」と言って、キャノピーが下に向かって滑空し
てしまい沈下速度が増加するという危険な状態になってしまったのだった。

山に向かって速度を増しながら、降下。
木にでもぶつかれば怪我なしでは済まないと思い、両足をぴったり合わせて木の幹
にぶつかりそうになったら蹴って避けようと思い、衝撃に備えた。
「バキバキ」と大きな音をたてながら、木に突っ込む。瞬間、両腕をクロス
させて顔面をガードした。体が木の幹にぶつからずに無事に木に引っかかっ
たと思いきや、木に引っかかった時の木のしなりの反動もなく、そのままバ
キバキ音を立てながら、なおも落ちていった。木の枝が少なくて細い所だっ
たので、そのまま木の間をすっぽ抜けて落ちていこうとしているのだった。
瞬間、頭の中を、山沈したが木に引っかからずに落ちた過去の死亡事故のこ
とが頭をよぎった。
「やはり無事では済まないか!?」と思い、両足をぴったり合わせて5点着
地に備えた。

着地したと思った瞬間、5点着地をするまでもなく、そのままズルズルと滑
り落ちていった。着地した場所が尾根の裏側の斜面だったので、着地の衝撃
が滑り落ちることで分散されたのだった。

どこも怪我はない。助かったと思い、無事を無線でしらせた。

機体もパラシュートも体も地面にあるので、回収はラインに絡んだ枝を取り
払ってデカバッグに詰めるだけで、比較的簡単だった。
回収を終えて山から脱出中に、前方の木の上に黄色い物が引っかかっている
のが見えたので何かと思って良く見ると、パラシュートを引っぱり出したス
プリング式小型パラシュートだった。通常、こんなものは無くなってしまう
のが普通。「ラッキー」と思ってこれも回収。

途中、仲間の救助隊と無線や笛をならしたりで、合流しようとするが、木が
深くてまるで場所がわからず、合流できたのは道のすぐ側に来てからだった
。救助隊もコンパスなしで探していた人たちは、方向がよくわからなくなっ
てしまい、帰り道に迷った人もいたとのこと。

山の中で、木の幹に爪で引っ掻いたような跡があったので、熊の通り道では
ないかと思い、びびりました。しばらく必死で笛を吹いていました。

(分析)
(1)機体性能を過信していた。風が強いことを考えると、尾根の前で上げ
ることを考えるべきであった。

(2)ややボコボコしたコンディションで、対地高度があまりないことを考
えると、アクセルの使用にはもっと慎重になるべきであった。

(3)潰れた後に、強風の中でゆっくりした旋回をしていることを考えると
、追い風方向になった場合のことを予想すべきであった。

(4)翼の中央部が残っていたことを考えると、潰れと反対側の翼端を潰し
て直線飛行を維持することができたかもしれない。

(5)パラシュート開傘後は、Bストールに入れるか、Dライザーを引っ張っ
て潰すかすべきであった。(最近はBストールが良いとされているようですが
女性の腕力ではどっちも難しいかも。ちなみにすぐに失速に入る機体は
簡単に潰せるそうです。)

(その他)
(1)私のメインパラシュートは、インナーバッグにスプリング式のパイロ
ットシュート(小型パラシュート)が付いていて、リップコードを引っ張る
と、ピンが抜けて後ろのコンテナから小型パラシュートがインナーバッグを
引っ張りながら飛び出すという、極めて開傘速度の早い物です。

#使ってみた私自身、話には聞いていましたが、こんなにも早い物だとは思
いませんでした。はっきり言って驚きです。リップコードを引いてから2〜
3秒で開いていたのではないかと思います。

この場合「1.左肩のグリップを確認する。2.グリップをつかむ。3.グ
リップを引っ張る。4.小型パラシュートが飛び出す。5.ラインとパラシ
ュートが延びる。6.開傘する。」というプロセスで、1〜3で2秒、4〜
6で3秒だとすると、開こうと思ってから合計5秒で開いていることになり
ます。

後ろ付けの場合、「1.サイドもしくは後ろのグリップを確認する。2.グ
リップをつかむ。3.グリップを引っ張る。4.インナーバッグを引っぱり
出す。5.インナーバッグを投げる。6.ラインとキャノピーが延びる。7
.開傘する。」というプロセスで、1〜3で3秒、4〜5で3秒、6.7で
3秒だとすると、開こうと思ってから合計9秒で開いていることになります
。ましてや、練習不足で余裕の無い人の場合、見えにくい、もしくは見えな
いグリップを探すのに手間どるとさらに何秒かかかるでしょう。

#もっとも、後ろ付けの人でも慣れた人はとても素早く投げて開いているの
を見たことがあるので、一概に遅いとは言えませんが、後ろ付けの人全員が
同じ素早さで投げれるとも思えません。たとえば練習生でもみんなあんなに
素早く投げれるんでしょうか?

#初めて大きく潰されて、必死で後ろのグリップを探っているうちに落ちた
死亡事故のことを聞いたことがあります。

#自信のない人には、スープエアの前付けコンテナは是非お勧めです。あれ
ならグリップが見え易いので、低高度で時間的余裕の無いときでもかなり有
効だと思います。

(2)機体のリカバリーには多少自信があったのですが、高度に余裕のない
状態での激しい挙動はとても私の手には負えませんでした。

エスケープはどちらかと言うと、今まで私が乗った機体の中では潰れた時の
挙動が大人しい方だと思っていたのですが、入ってしまうと、あれほど激し
くなるとは思いませんでした。やはり高性能機は、日頃どんなに大人しくて
も、それは猫を被った仮の姿で、それなりの状況になるとそれなりの反応を
示すのだと思いました。

(3)低沈下率のパラシュートでは(LARA250の場合データによると90kgで
は5m/s以下)、開傘後、機体がラム圧を維持出来ずに潰れてしまうのではな
いかと思っていたのですが、逆にラム圧を維持するためか、前に被ってダウ
ンプレーンを起こしたのは意外でした。

(4)バリオのメモリーを見ると、最大沈下が8.8m/sで最大エアスピード
が63km/hでした。エアスピードは振り回されている時のものだと思います
が、沈下は振り回されている時のものなのか、ダウンプレーンの時のものな
のかはわかりません。

(5)5点着地に備えて両足をぴったり合わせた状態での着地でしたので、
捻挫もありませんでしたが、片足が先に着地していたら、捻挫or骨折してい
たのではないかと思います。人間の体は片足or腕で体重を支えるようには出
来ていません。5点着地は極めて有効ですので練習をお勧めします。

(6)幸いにして無傷でしたので、救助隊と合流できなくても大丈夫でした
が、怪我で歩けなくなっていた場合、機体は木に引っかかっていないので目
印がなくてかなり救助に時間がかかったのではないかと思います。もし大怪
我で意識がもうろうとしていたら笛も吹けないし無線連絡もできませんので
どうなったことやら・・・。交通事故で意識がもうろうとなったことのある
人は「意識もうろうとなった時のために防犯ベルでも持っておくと良いので
はないか。あれなら紐を引っ張ればそのまま鳴りっぱなしだから。」と言っ
てました。

それにしても全くもって無事で済んで何よりでした。

以上

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